立会外分売(たちあいがいぶんばい)は「証券取引所の取引時間外(立会外)で、大量の売注文を分売する売買方法」で、上場会社の株式分布状況の改善、特に個人株主の増大を図るための方策として広く利用されています。

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私達、個人投資家のメリットとしては通常よりも割引価格で株を買えることです。また、株式の購入手数料も無料です。立会外分売の実施予定に関しては、数日前から2~3週間前までに立会外分売実施の発表があります。また立会外分売実施日は複数日に予定されていますが、概ね実施予定の初日に全数してしまうことが多いです。

具体的には立会外分売の実施日の前日の取引が終了した後に、分売を実施する場合、その割引された価格が発表されます。その後、立会外分売を取り扱っている各証券会社で申込受付を行い、概ね分売実施日の午前8時30分ぐらいまでに申し受付を終了。その後、9時前後に配分がされます。

割引は概ね2~3%程度ですが、実際に2018年1~2月に実施された立会外分売のデータを紹介します。下記表の一番右の損益は寄り価格で売った場合の損益です。1枚あたりランチ代やたまにディナー代が出る程度お得な状況です。

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立会外分売情報トップページ (2018年以降のデータをまとめています)

立会外分売がお得な理由

立会外分売は株を初めてする人にはあまり知られていませんが、慣れてくると証券会社のホームページに載っているのを見かけて、実は額は小さいもののお得な取引をできるチャンスが何回も訪れているということを知るようになると思います。

立会外分売に参加するメリットをいくつか紹介すると

  • 分売価格は2~5%程度割引された価格で買うことが出来る
  • 買付手数料は無料(売却時は有料)
  • 分売申し込みが前日夕方から、当日朝までと非常に短く資金回転が良い

あたりでしょうか?小さい割引ではあるもののディスカウントされた価格で買えるというのは優位性があります。よく言われるのが株のバーゲンセールと表現されますね。

IPOほど希少過ぎず、また人気で申し込んでも全く当たらないわけではなく、ディスカウント率こそは少ないですが申し込めばそれなりに当選して割安で株を手に入れるチャンスが多いというのも嬉しいですね。IPOの当たらないストレスを立会外分売の当選でストレス解消にも最適です。

なぜ、このように個人投資家にチャンスが訪れるかと言うと、立会外分売の性質上のもので「上場会社の株式分布状況の改善、特に個人株主の増大を図るための方策」として立会外分売が使われるからです。そのため、分売には一人あたりの上限分売数が設けられています。これによって、広く浅く若干のセール価格で株が配られることになります。

また分売の目的として東証プライム市場などへの昇格なども睨んでいる場合があります。そのためには株主数や浮動株の割合を増やす必要があり、立会外分売が一つの方策になります。同時に株主優待などを設定して個人株主を繋ぎ止めることもしたりします。

もちろん立会外分売がいつもお得というわけではない

タイトル通り、いつも立会外分売に申し込んでいけばいいというわけではありません。やはり株ですのでリスクがあります。一番大きいリスクは立会外分売実施の価格よりも、寄り以降の値段が低い場合ですね。

その他に立会外分売に参加するデメリットを挙げておくと

  • もちろん損する場合がある(分売価格よりも株価低下)
  • 割引価格もそれほど大きくなく、大きく儲けることは出来ない
  • 抽選確率はIPOなどに比べると高いが、やはり人気や希少になると低くなる
  • 売却時に手数料がかかる

このあたりでしょうか?特に立会外分売は2%程度の利益を得られれば御の字ですので、売却時の取引手数料も気になります。ネット証券ですと取引手数料は安いですので、そのあたりは手数料も気にして立会外分売で少額でも利益が出そうなら参加したいですね。

また「損をする場合」というのは、大量の売出しで需給バランスが供給過多の場合や、分売価格の株のバリエーション(割安性)が良くないことが多く、そうなると不人気で立会外分売に当たりやすくなります。そういったものを回避するために立会外分売実施のアナウンスがあれば、その銘柄の状況や立会外分売の実施内容をチェックして参加するかの判断を決めることが重要です。

立会外分売で見ておきたいポイント

立会外分売のメリットやデメリットを見てきましたが、基本的にはローリスク・ローリターンで積み重ねて収益を上げていく作戦になります。そのためには下手に損失を受けないようしっかり立会外分売の性質を見ておく必要があります。

立会外分売で見ておきたいポイントをチェックしましょう!

  • 立会外分売実施の理由

まず最初に調べておきたいのは立会外分売の目的(理由)です。立会外分売を実施発表する時に適時開示でお知らせが出ます。その中で「立会外分売の目的」という項目があります。その内容は殆どが「株式の流動性改善や市場昇格を目的としたといった内容しか書いていません」。

しかし実際には大株主が保有株を手放したい思惑が絡んでいることもあります。流動性が低くなっている銘柄では一気に大株主が大量に売り出すと株価が大きく下がってしまいます。大株主(例えば社長やその資金管理会社、関係先企業など)が株を売りたいということは、その銘柄の将来性に疑問を持っている可能性があり、株価及び企業の成長が思いやられます。

ただ本当に株主数の増加や、流動性改善を求めている場合があります。それを調べるために立会外分売が発表されたら銘柄の状況を調べたいところです。

  • 実施銘柄の株主数、浮動株の割合

特にグロース銘柄などで東証プライム昇格などを目指して流動性を高めるために実施する場合は現状の株主数や流通株式数などをチェックしておきたいです。

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分売を実施することでとりあえずの流通数は増える(株主数などはすぐに売られてそれ程増えない可能性も)ことになり、実際に昇格要件を満たしたいとみられる時はディスカウントでセールしているわけで狙いやすいです。また東証プライム・スタンダード銘柄などで逆に形式要件が満たされないほど流通量が悪くなっている場合もチャンスかも知れません。

  • 株価の状況(割安性のチェック・流動性・ボラティリティ+業績)

その株自体の割安性もチェックしておきたいところです。割安性の判断は難しいところですが、とりあえずPERやPBRといった指標ぐらいは見ておきたいですね。さらに言えば配当利回り、株主優待(内容や有無)もみて現状の株価でも割安感があるなら安心できます。

また立会外分売発表前の流動性も気になります。立会外分売の規模に対して流動性があまりにも低い場合は分売後の需給が悪くなり、高値で売れない可能性が高まります。さらにボラティリティ(株価変動)はローリスク投資の立会外分売では、あまりボラティリティが大きいと参加しにくくなります(小さなディスカウントの効果が少なくなるため)。

  • 立会外分売の規模

分売の規模も実施日以降の需給面で重要です。規模では立会外分売の枚数と1人あたりの上限数をチェックしましょう。当然規模が小さいほど狙い目ですが、その分当選確率は下がります。1人あたりの上限数も少ないほうが広く配っても分売を捌ききれる内容という意味で好感です。

  • 当日の朝の板状況は殆ど参考にならない、海外市場の影響は多少あり

立会外分売は当日の朝8時台まで申し込みを受け付けていて、8時以降の板状況を確認できます。板状況を見て分売価格よりも上だから申し込みという方法は賢そうに見えますが、実際分売銘柄には板状況をよく見せるような買いと、分売配分の売りがまだ入っていないので参考にならないことが多いです。私は当日の朝の板を見てから参加可否を判断はしていません。

反対に当日の朝まで申し込めるメリットの一つとしては海外市場の状況を見てから申し込める(キャンセルできる)ということがあります。非常に大きな株価下落で市場が冷え切っている時は無理に参加しなくても、どの株も割引セール状況になりますので申込の判断の一つになります。

  • 貸借銘柄はプラス要因

貸借銘柄で空売り可能な場合はヘッジが可能ですので参加しやすいです。公募売出もそうですがディスカウント価格で売り出す場合は、その前にヘッジを掛けておけば割引価格分を手に入れることができます。そういった手法が使えるということはある程度の空売りの買い戻しが期待できるということです。

見るポイントをまとめておきます

    • 分売実施目的と現在の株流通数(昇格目的など本当に流通数を増やしたいか?)
    • 株価の状況(類似企業比較のPER/PBR、その他配当・株主優待状況)
    • 立会外分売の規模と流動性
    • 海外市場や分売実施日の地合い
    • 貸借銘柄か否か

見ておきたいポイントを挙げていくと数が増えてしまいましたが、まとめるとそれほど多くはありません。それぞれの要素で参加スタンスがどれほどプラスになるか見るといいでしょう。基本的には分売で手に入れて寄りで売ればディスカウントより若干減る程度での利益が出る勝率の高い方法ですので、あまり気にせず少しでも条件が良い銘柄であることの確認に使って下さい。

個人的には「業績良く株価上昇銘柄ながら過度な高値でないもの」「株主優待あり」「配当利回り」「分売の規模があまりに大きすぎない」「貸借銘柄はやや鉄板」といった感じで緩く判断していますが基本ローリスクですので、資金と時間に余力があればほぼ参加する姿勢でいます。

立会外分売情報トップページ

また、それぞれのポイントをすぐに確認できるように情報をまとめていっています。

立会外分売が申し込める証券会社(主にネット申し込み)

立会外分売が申し込める証券会社でオススメを紹介します。店頭取引でもブロックオファーなどで複数セットで案内があったりしますが、気軽なネット取引が個人的には好きです。

当日の朝8:20まで申し込めます。抽選方法としては申込数に比例している雰囲気ですので、多めに申し込んでおいたほうがいいかもしれません。口座数が多いため、あまり立会外分売は当たらない印象です。資金力がある方はMAXで申し込んでおいたほうが良いでしょう。

当日の朝8:30まで申し込めます。そこそこ貰える印象です。ただし若干約定時間が遅いので朝の寄りで成売り注文などは出しづらいかもしれません。

当日の朝8:20まで申し込めます。SBI証券よりも立会外分売は当たりやすい印象でオススメの証券会社です。意外にも楽天証券を利用する人は立会外分売を知らない人が多いのかもしれません。

立会外セールという独自のサービスもやるぐらいで、こういった個人向けのサービスは強いです。端株の手数料も安いこともありますし、立会外分売サービスは結構力を入れてそうです。

口座数が少ないため狙い目証券かもしれません。枚数が少ないのか当落結果などの情報も早いです。

マルサントレードから事業継承されて、岡三オンラインでも2022年9月から立会外分売の受付がスタートされています。マルサントレード時代と同じく、朝8時までの申込とちょっと締切が早いです。他のネット証券よりもネット取引はマイナーということもあり穴場感はあります。

総合証券でもダイレクト口座で立会外分売が申し込めます。ただ申込は朝2時までなので、ほぼ前日の夜に申込ということになります。かなり欲しい案件の場合は前日夜に申し込んでおくといいでしょう。


今のところ上記証券会社あたりがネットから申し込めますが、今後数が増えていくかもしれませんし。あまり複数から申し込んでも大変なので、賢くストレスがない程度に申し込みたいです。私はもちろん全部の証券会社を用意して銘柄によって複数申し込んだり、一部申し込んだりしています。

立会外分売の各証券会社申し込み期限から、約定時間までの流れのまとめ

過去の抽選結果などもまとめることで、どの証券会社が当たりやすいかや立会外分売の美味しさ状況などを判断しています。利益こそ少ないかもしれませんがお小遣い稼ぎにはなるという印象です。

立会外分売抽選配分当選履歴と立会外分売初値売り投資戦績

立会外トレード、立会外セール、ブロックトレードについて

立会外分売とほぼ内容は同じですが、証券会社が独自に実施する「立会外トレード(立会外セール)」というものがあります。違いと言えば証券会社1社が独自に立会外分売のようなものをする程度です。

2017年10月にSBI証券が「立会外トレード」サービスを開始しました。

またマネックス証券も2018年3月に「立会外セール」サービスを開始しています。

最初にSBI証券が立会外分売と似たようなサービスを1社のみ提供という形ではじめましたが、マネックス証券が追随したように証券会社独自で提供するサービスも増えるかもしれません。こちらも同じように条件が良いのかどうかをチェックして参加していくと良さそうです。

2024年11月に楽天証券が「ブロックトレード」という同様のサービスを開始しています。

楽天証券のブロックトレードがスタートしたので内容をチェックしましたが、実施銘柄は前日の場が終了してから、さらに翌日の割引率は0.5~1.5%と小さいもので、いわゆるBO(ブロックオファー)に近いものでした。立会外分売と同様とは言えないものですので、BOに近いものとして様子をうかがうのが良さそうです。多少の割引で買えることには違いない部分はあります。

これで、大手ネット証券3社が独自の立会外分売サービスを用意していることになります。