JR九州は郵政やLINEのIPO時のように、大型で話題性が高いので各メディアからいろいろな情報が出てくるでしょう。さらには各メディアからは、それぞれの思惑に則った情報の流れ方があります。
いろいろなブル・ベア情報をまとめてなるべく個人投資家のプレーンな目線から見た「結局買いか?」の結論を出したいと思います。
私は過去2回「郵政・LINE」ともに、最終結論は「買い」と評価しています。お祭りIPOは基本的に積極参加姿勢で問題ないと思っていますが、同じような戦略だと足元を救われる可能性もあるのでしっかりチェックします。
それではブル・ベアをまとめていきます。
ブル(株価押上要因)
・もうあまり残っていない官製(政府系売出)IPO
政府系の売出IPOは前年度の郵政IPOが記憶に新しいですが、もうそれほど残っていません。今回のIPOは独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構という政府機関の株を全数売り出すことになります。
旧国鉄の流れをくむJR系では4社目の上場となり三島会社(九州・四国・北海道)からの上場は初めてです。後は上場観測がある東京メトロのほか、空港や地下鉄・高速道路的なインフラ系ぐらいしか思い当たりません。
郵政IPOは初値の点では成功を収めたIPOだと思います。過去のNTTやJTなどの状況を考えるとどれだけ個人の意欲が沸くかが問題な気がします。
そういう意味ではJR九州は個人には馴染みやすい業種だと感じます。九州を応援しようという気持ちの人は多いのではないでしょうか?
・既に上場のJR東日本・JR西日本・JR東海はどうだった?⇒すべて現状株価値上がり
JR九州には格好の比較対象が3社あります。JR東日本・JR西日本・JR東海の3社です。3つの上場から今までの様子を見てみましょう。
【JR東日本(9020)】
JRの中で一番最初に上場しています。1993年10月上場です。
公開価格38万→初値60万(1枚あたりプラス22万でした)
2016年9月15日の引けの株価は8,823円です。100分割がありますので88万程度が今の株価ですので、初値よりも値を上げて推移していることになります。
【JR西日本(9021)】
1996年10月に上場しました。
公開価格35.7万→初値36万(1枚あたりプラス3000円でした)
こちらは思ったほど初値が伸びなかったことになります。2016年9月15日の引けの株価は6,037円です。こちらも100分割がありますので60万程度が今の株価となり、株価推移は順調です。
【JR東海(9022)】
1997年10月上場。
公開価格38万→初値38.5万(1枚あたりプラス5000円でした)
公募割れこそはしないものの初値はそれほど奮わない結果です。ただし2016年9月15日の引けの株価は17,100円です。100分割分を割り戻すと171万になります。約5倍弱まで値上っていて順調です。
いずれも初値は公募割れせず現状の株価が値上がり状況なのは好材料でしょう。特にJR東海の5倍弱というのは大型株としては好調です。新幹線という強みを持っていますが、JR九州では「ななつ星」に代表されるような、個人を惹きつける特色を持っています。
上記3社の上場はいずれも90年代とかなり遡りますし、20年ぶりのJR上場となるとやはり話題性は高いのではないでしょうか?個人的には20年ぶりの希少性は初値に貢献しやすいと思っています。
・株主優待を既に発表
鉄道株といえば株主優待も人気です。すでに株主還元方針として優待を発表しています。また配当も配当性向30%程度を目安として安定利回り目標です。
乗車券の半額や、各種サービス券です。九州での旅行などに活用できそうですね。ただ割引券程度なので株主優待の拡充には含みを持たせている印象もあります。
乗車割引半額券は特急券なども使えますので、九州の新幹線縦断などでは相当割引になりそうです。
個人的にはブル要因としては、JR系の上場4社目で20年という年月が良い意味で欲しがる人を増やすのではないかと思っています。もう一点、想定価格も割安感が伺えるので、まだJR三社で公募割れはないので公募取得の安心感もあると言えそうです。
ベア(株価押し下げ要因)
・大型全数売出IPO
これは銘柄でなくIPOの初値に関してのデータになりますが、基本的に大型案件は初値は上がりにくい傾向です。
参考:【IPOサマリー】2001年以降のIPO情報を一覧、グラフ表示
ただし、過去のデータから傾向が出ているだけでJR九州レベルの巨額IPOでは注目度の度合いも違います。さらに長期保有を目的とする層も多いので、割安感さえあればさほど気にする必要はないかもしれません。
・熊本地震を始め天災の影響が大きい
熊本地震の影響で上場予定に関しても疑問が出ていましたが、その影響予想は既にでていて90億円の減収と復旧費用85億円の計175億円となっています。
ただ、台風などで東北や北海道などもダメージを受けました。事業的に天災による被害の影響が大きいビジネスになります。それ自体は問題ありませんが、上場当初に意識されやすくなっている気がします(その分、価格設定に織り込み済みで安く買えるというプラスの見方もできます)。
・国の補助金が収益の一つだったものがこれからはなくなる
上場するメリットは国の指図を受けず経営できることです。反対にデメリットは、今後は国の補助金などを目当てに出来ないことです。
なお、この国の補助金に関しては2016年3月期に一気に減損処理しました(負債として吐き出した格好です)。これは上場して今後株を持つ身にとってはありがたいことで良い決断だと思います。
当方、大型の注目IPOを整理してまとめたのは郵政IPO,コメダ珈琲、LINEときて、今回で4回目です。
あまりバイアスの掛かった見方をしないように心がけていますが、4つの中では一番イメージが良い案件になると思っています。BBスタンスもCレベルのものが多かったですが、JR九州はBレベルするかもしれません。
安定的に業績を伸ばしていますし、九州を応援したい投資家は多いです。さらに、売出IPOながら価格設定や前もって減損処理するなど、上場後の株主のことをよく考えていて買いに安心感を感じます。
結論としては、やはり積極的に取りに行って良い銘柄ではないでしょうか?