株主優待クロス取引はリスクを低減して株主優待を楽しむという非常に効果のある取引手法ですが、「複数の証券会社を利用する」「1回の権利付き日でたくさんの銘柄数を取得するために多くの取引が必要になる」など、やや複雑な取引方法が絡むためミスも多くなります。
このページでは株主優待クロス取引あるある失敗集をまとめておくことで、注文ミスなどを起こさないように記載しておきます。最後の方はミスではなくありえるリスクに関しても載せました。注意喚起の意味も含めて一緒に記載しておきます。随時、追加更新してこのページを見れば「やりがちな失敗」が分かりミスを起こさないようにさせたいですね。健忘録としてお使いください。
ミスやリスクの一覧です。クリックすれば詳しい内容に進めます。
- 現引き忘れ
- 現渡し忘れ
- 買い注文忘れミス
- 優待権利単元数確認ミス
- 長期保有優遇内容確認ミス
- 権利月日確認ミス(特に2回の場合、片方の条件が違うなど)
- 一般信用売り注文ミス(制度信用を焦って選択)
- 一般口座、特定口座選択ミス
- 同じ銘柄再注文ミス
- 売り買いの株数注文ミス
- 一般信用短期売り日数計算ミス(早過ぎクロス)
- 早建てクロスを権利日前に解消ミス
- 信用配当落ち調整金不足
- 場中注文ミス(引け成り設定忘れ)
- 取引手数料無料計算ミス
- 株主優待ゴミ箱行き
- 株主優待消化出来ず
- 現引き停止リスク
- ストップ高・ストップ安リスク
- 株式分割時リスク
現引き忘れ(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★★☆)
取引手数料をなるべく安く済まそうと買いを「信用買い→現引」で現物保有しようとする時に出るミス。
クロス達成の安心感から忘れやすい。権利付日まで現引き忘れた場合は優待が貰えないという何をやってるんだかレベルの失敗。一方で制度買いなら逆日歩が貰える可能性は残す。
起きやすいパターンの一つとしては、早めのクロス達成で現引余力が足りない時に持ち越しておいたりすると危険。信用買いを長く持てば持つだけ金利がじわじわ効いてくるので、出来る限り無理をせずに信用買いをしたらすぐ現引きする癖を付けておきたい。
現渡し忘れ (ミスりやすさ★☆☆、打撃度★★☆)
現渡し作業は予定として慣れてくればミスしなさそうな作業の一つだが、特に複数の証券会社でクロスを作っていると現渡し作業を忘れていた証券口座が出てくることが多い。普段利用していない証券会社で一般信用売建がありクロスしていると忘れていたりする。
そういった場合、現渡し忘れの玉に気づくのが遅くなりクロス解消作業が遅くなる分だけ、信用売り玉の金利分がのしかかるので結構手痛いミス(1ヶ月後に気づいたりする)。作業をするかしないかの差で、ただお金を払い続けることになるので十分な作業完了チェック体制を取っておきたい。
買い注文忘れミス(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★★☆)
一般信用の売建争奪戦に必至で売建が取れたら安心して買い側の注文を忘れるミス。ただ空売りを仕掛けただけの状態になる。
損失になるかは、次の日以降に気づいた時の株価次第。ミスとしては意外にも起きやすい。特に優待銘柄が多い月や、買いと売りを別の証券会社で注文すると言ったイレギュラーなことをすると起こしやすい。
優待権利単元数確認ミス(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★☆☆)
一番多いパターンは今まで100株で優待が貰えていたものが、株式分割などで200株、300株から貰えると変更になった場合。1年前は100株で貰えていたので、そのままの感覚で100株クロスで済ましてしまうことが多い。
また1000株~の銘柄で100株だけクロスしているという状況もたまにある。
損害的にはただ優待が貰えない不必要クロスを作った分の手数料程度。
長期保有優遇内容確認ミス (ミスりやすさ★★☆、打撃度★☆☆)
最近増えている長期保有優遇制度の細かい確認ミス。また、確認していても「端株が効く、効かない」「空クロス(四半期ごと、半期ごと)が必要」など銘柄によって様々に異なるので確認ミスは起きやすい。
損害としては「優待が貰えない」「優待内容がグレードダウン」など。
もともと長期優遇銘柄をクロスで取るというのは細かすぎる部分もあるので、あまりにややこしくて優待内容がしれていると感じるなら取得不要銘柄としてパスしたほうが良いかもしれない。
権利月日確認ミス(特に2回の場合、片方の条件が違うなど)(ミスりやすさ★★☆、打撃度★☆☆)
多いのが3月9月、6月12月などでどちらも優待があるけど内容が違うというもの。
失敗例を紹介すると上記はエステー(4951)の優待内容。
3月末は100株以上で1000円相当、1000株以上で3000円相当
9月末は1000株以上で3000円相当。
この内容で9月末に100株だけクロスして何も貰えないなど。
他にも2回優待権利があって、片方の優待は「カレンダーのみ」などで優待自体が不必要という場合も多い。年2回以上優待がある銘柄はしっかりと内容をチェックしておきたい。
一般信用売り注文ミス(制度信用を焦って選択)(ミスりやすさ★★☆、打撃度★★☆)
こちらは一般信用の売建争奪戦で急いでいるとやりがちなミス。注文を急ぐがあまり信用取引を「制度」で選んで空売りをしてしまう。制度信用で逆日歩が付いてしまうと痛いし、一般信用で争奪戦の銘柄だと逆日歩リスクは高めということで、高打撃になる可能性が高い。
争奪戦で急いでいても注文は慎重に、また注文作業が終わったら一度注文内容を確認しておきたい。
一般口座、特定口座選択ミス (ミスりやすさ★☆☆、打撃度★☆☆)
信用取引の「一般信用」と特定口座での名称の「一般口座」が似ているため起きやすい。
例としてGMOクリック証券の注文画面を載せるが、どちらも「一般」という表記なのがミスのもとと感じる。しかもGMOクリック証券は買い側の信用取引金利が制度信用よりも一般信用を安く多用するため、ミスが起きやすそう。
個人的にはミスしたことはないが、何度もクリックする場所を一回間違えるなどは経験している。
ミスの打撃としては小さく、一般口座の取引になると税金の計算(確定申告の計算)が少し変化するだけというのもある。例年確定申告で複数の証券口座の内容をまとめている場合は、源泉徴収されてないものがそのまま出てくるので、それほど面倒でもないかもしれない。
同じ銘柄再注文ミス(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★☆☆)
やりがちなのが、早めのクロスをしていた銘柄を権利日直前になって再び一般信用の在庫が余っているのを見て急いで注文しているなど。「もう持ってたのに~!」という無駄な注文ミス。あまり優待取得にガツガツしていると起き易いミスと感じる。
注文銘柄管理をしっかりしているとあまり起きない。私はエクセルで注文銘柄は管理していて、システムが出来上がっているので、このミスは起こしたことがない。
売り買いの株数注文ミス(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★☆☆)
こちらは100株で優待が貰えない銘柄などでよく起きる。売建を300株や1000株などとりあえずゲットしてから、買い側の注文を入れる時に100株しか入れずに済ますなど。やはり売建を作った安心感からか買い注文時に見するタイプは多い。
注文を一通り入れたら、注文内容一覧で確認する癖をつければミスは起きにくい。このミスは起こしたことがない。
一般信用短期売り日数計算ミス(早過ぎクロス)(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★★☆)
争奪戦を急ぎすぎて起きるミス。短期売りで返済期限の14日or15日よりも前にクロスを建てて、優待権利日を通過せずに売建精算の憂き目に合う。こういう事が起きるほど早建て合戦が過熱しているのもどうかと思う。
早建てクロスを権利日前に解消ミス(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★★☆)
一般信用の争奪戦が過激化して、人気銘柄を確保したいがために早めにクロスし過ぎることで起きるミス。
内容としては例えば4月末権利の人気銘柄を3月末権利が来る前にクロスで確保した場合に、3月末のクロスが終わり現渡し作業としている時に、間違えて4月末権利のものも現渡でクロス解消してしまう。
せっかく確保していたのに金利だけ払って放流、そして人気銘柄なので、その後取ろうにも確保できない。
逆に3月末などの現渡し作業が済む頃に、ひょろっと放流されたものを取ることができる人もいる。逃した魚は大きい。
信用配当落ち調整金不足(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★★★)
やってしまうと結構痛い内容。
優待権利月から約3ヶ月後に信用配当落調整金というものが徴収されるが、その時になって証券口座から資金を引き上げていると資金不足で、最悪信用口座が閉鎖されてしまう。こうなると株主優待クロス取引自体ができなくなるので、資金は引き上げるにしても優待クロスで使っている口座には数十万ぐらいは常に置いておきたいところ。
場中注文ミス(引け成り設定忘れ)(ミスりやすさ★★★、打撃度★★☆)
これはあまりない注文ですが、ミスりやすさは高いと言える内容です。特に権利付き最終日の当日に場中で一般信用売在庫が出ることで「引け成りクロス」を作ろうと思って急いで、成り行きで「引け」を選択せずに注文してしまいすぐに約定してしまうミスになります。
その後、買い注文を入れないといけませんが既に株価が変動しているはずで基本的には板的に苦しい立場になるでしょう。
取引手数料無料計算ミス (ミスりやすさ★★☆、打撃度★★☆)
多いのが、約定代金100万円までは取引手数料無料という条件で計算ミスをしてしまい100万円超えなど取引手数料が掛かってしまうミスです。
松井証券ではボックス取引手数料が50万まで無料という条件ですが、「現物買い+信用売り」なら合計50万なので25万までしか1日では取引手数料無料でクロスできません。しかしながら「一日信用の取引手数料は別枠」ですので「信用買い(1日)をすぐ現引き+信用売り」という注文なら約定代金50万円相当までクロスが作れます。
このように複雑に手数料体系が各証券会社で分かれていますのでミスになりやすいですね。証券会社での「手数料コース」の選択が間違っていて、実は結構手数料払っていたなどもありそうです。
こういうのは本人が気づいていないで、いつの間にか取引手数料多く払っている人が多そうです。
株主優待ゴミ箱行き(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★★☆)
特に多いのが議決権行使と同時にクオカードなどが入っていて、封筒を開ける作業に忙殺されているときに他の冊子と重なってゴミ箱行きになっている例です。クオカードは薄いので捨ててしまわないように注意しましょう。
優待申込みハガキを捨ててしまう。株主番号が必要なのに、配当計算書の紙を捨てて株主番号が分からないなどあります。なお、株主番号が分からない場合は株主名簿を管理している信託銀行などに電話で問い合わせると教えてくれます。
株主優待消化できず(ミスりやすさ★☆☆、打撃度★★☆)
期限がある株主優待を期限内に使い切れないミスです。外食系などで多いですね。コロナ禍で外食機会が減った(有効期限が伸びて安心している)と久しぶりに見たら大幅に期限が切れていたなどあります。
また届いた冷凍食品や食料品の賞味期限にも注意したいですね。
優待券を家族に渡していると、その優待券の価値をあまり感じていない(自分で取ってないのでクロス取引などの苦労を感じないため、本当にタダ券レベルで考える)ことからか優待消化を優先せず期限切れもよくあります。
責任を持って消化しないと、せっかくの取り損なので注意しましょう。
現引き停止リスク (リスク可能性★☆☆)
こちらはリスクですが、「現引き停止」が稀に発生した場合。信用買いしたポジションが現引きできず、現物ポジションが持てない状況になるリスクです。
対応としてはそのクロスは反対売買で一旦クロス解消。「現物+信用売り」でクロスを組み直せるなら直してもいいですが、現引き停止になっている場合は、ほぼ信用取引関係の取引は出来ない可能性が高いので、クロス解消して優待を諦めるのが良いでしょう。
ストップ高・ストップ安リスク (リスク可能性★☆☆)
基本的にクロス取引は寄り成で注文を出しますが、その銘柄が「ストップ高・ストップ安」になってしまった場合は、片方だけ約定してしまうリスクがあります。しかも片方約定した場合は、基本的にストップするほど上下する状況の不利な注文側だけが約定する可能性があります。
寄成注文で場中に値がつかなくなりそうと判断される場合は、注文取り消ししてクロス取引は諦らめたほうが良いでしょう。優待を出している銘柄で権利付き最終日にこういった状況になるのは少ないですが、低位株などは気をつけたほうが良いですね。
株式分割時リスク (リスク可能性★☆☆)
権利付き最終日には分割する銘柄も多いです。分割時には優待内容に関しての変更も恐らく同時に発表されているはずなので、よく内容を見ておきたいですね。
逆に株式分割の銘柄は様子見している人が多そうで、クロス勢は控えめに取引しているので注文しやすさや逆日歩があまりつきにくいといった特徴がある気もしています。